素劇(すげき)
『あゝ東京行進曲』

原作 結城亮一
脚本 藤田 傳
演出 関矢幸雄
原作 結城亮一
脚本 藤田 傳
演出 関矢幸雄

日本のレコード歌謡の草創期ともいうべき
昭和の初頭、
「東京行進曲」「紅屋の娘」など
数々の大ヒットで一世を風靡した歌手・
佐藤千夜子
波瀾に満ちたその生涯を編年体で綴りながら、
昭和という時代を活写した
「素劇」ならではの舞台。

2014年夏、東北演鑑連 例会公演
7月15〜30日 須賀川/いわき/福島/会津/鶴岡/盛岡/郡山/山形
8月19〜31日 弘前/十和田/青森/八戸/秋田/仙台泉/仙台

2014年夏、東北演鑑連 例会公演
7月15〜30日 須賀川/いわき/福島/会津/鶴岡/盛岡/郡山/山形
8月19〜31日 弘前/十和田/青森/八戸/秋田/仙台泉/仙台

写真:宮内 勝

<解説>

 日本のレコード歌謡の草創期ともいうべき昭和の初頭 _ 日本レコード歌手第一号として輝かしい脚光を浴び、「波浮の港」「東京行進曲」「紅屋の娘」など数々の大ヒットで一世を風靡した歌姫・佐藤千夜子の足跡を辿り、明治から大正、そして昭和という激動の時代を駆け抜けた一人の女性の生涯を描いた作品です。
 原作は結城亮一の同名小説『あゝ東京行進曲』。波瀾に満ちた佐藤千夜子の一代記とも言うべきこの小説を藤田傳が脚色。千夜子の生涯を編年体で綴りながら、急激に移ろっていた昭和という時代を辛辣に描き出していきます。同時に、年代によって複数の千夜子を登場させ、晩年の彼女(或いは既に奇跡の人となった千夜子)が、若き日の自分自身を振り返り、栄光と凋落の道程、そして激動の時代を奔放に駆け抜けた自らの足跡を見つめ直すという重構造で物語は進んでいきます。
晩年は癌に蝕まれ、生活保護の身となりながら新宿の大久保病院でひっそりと息を引き取ったと言われる佐藤千夜子。彼女の中に最後に去来したものは果たして何であったか・・・、観客一人ひとりに問いかけるラストシーンです。
 演出は関矢幸雄。作品のタイトルにある“素劇(すげき)”は、関矢幸雄が提唱する独自の表現様式です。日本の伝統的な表現様式と言われている「見立て」をヒントに、素朴で単純にして、より深い意図をあらわす表現の模索の中からあみだされたのが、この “素劇” です。リアルな舞台装置や衣裳・メイキャップなどを一切排し、観客の想像力を喚起することによって物語の真意(ドラマ)を表現していく ―― この作品においては、21個の黒箱と数本の白いロープを一瞬にして様々な形に組み合わせ、そして時には俳優の肉体そのものも舞台装置にしながら場面が構築されていきます。激動の昭和の移ろいは、シンプルで自由自在な“素劇”によって表現され、それが観客の記憶の中にある風景と重なり合いながら、黒一色の舞台の中に色鮮やかな場面を創り出していくわけです。
また、全編に当時の流行歌50曲あまりをちりばめ、出演者のオール・アカペラ、オール口三味線で歌い綴られていきます。カラオケなどなかった時代、当時の人々はどんな思いを歌声に込めたのか・・・佐藤千夜子の生きざまとともに、同時代を生きた大正・昭和の庶民の心の“息吹”を活写した舞台です。
初演は、1993年(平成5年)4月。佐藤千夜子が一世を風靡した時代、懐かしの昭和歌謡史に相応しく浅草・木馬亭での公演。初演の舞台は、その風刺とユーモアの効いた演出、かつまた実験的・先駆的な“素劇様式”が高く評価され、第1回読売演劇大賞・演出家部門優秀賞を受賞。「劇作家中心の演劇公演が多い中で、演出家の文体を示した」などの評が寄せられました。以来、全国各地の演劇鑑賞団体や高校生芸術鑑賞事業、またブラジル・パラグアイでの海外公演等々、300ステージ超の上演を重ねてきた「素劇 あゝ東京行進曲」。世代を越え国境を越えた観客のみなさんと出会いながら、より深いドラマの創出を目指して、毎回磨き抜いてきました。5年振りの東京公演となる今回、“演劇ならではの表現”、“演劇ならではの力”を存分に楽しんでいただきながら、「今」を生きる「元気」を、躍動する舞台に生み出してみたいと思います。